海外で出始めたAIエフェクターの流れ。日本にも来るのでしょうか

エフェクターは、踏むものでした。

つまみを回して、音を探して、気に入らなければ外します。ペダルボードの上に並んだ箱は、かなり物理的な存在でした。重いですし、場所も取りますし、なぜか買った直後に別のものが欲しくなります。

ところが最近は、その箱の意味が少し変わってきています。

これは、日本でいま大流行している話ではありません。

むしろ、海外で先に出始めている小さな流れです。日本のギタリストにとっては、まだ少し遠い話に見えるかもしれません。たぶん多くの人にとっては、生成AIよりも、普通の歪みや空間系やマルチエフェクターのほうがずっと現実に近いはずです。

でも、海外の機材ニュースを見ていると、ギターの音作りにAIやプロンプト的な発想が入りはじめています。その流れが、そのままの形で日本に来るかは分かりません。ただ、何かしらの形で入ってくる可能性はあります。

マルチエフェクターは小さくなり、アンプシミュレーターは精密になり、BOSS PX-1のように「中身を差し替える」発想も出てきました。そして次に来ているのが、言葉でエフェクトを作るという流れです。

その中心にいる機材のひとつが、Polyend Endlessです。

まだ万人向けの定番機材とは言い切れません。けれど、ギター機材の未来を考えるうえでは、かなり面白い場所に立っています。

この記事は、現時点で公開されている海外情報やレビューをもとにした先取り観測記事です。実機を長く使い込んだレビューではなく、「こういう流れが日本にも来るかもしれない」という視点で、いま見えている変化をギタリスト目線で整理します。

Polyend Endlessとは何か

Polyend Endlessは、オープンソース寄りのカスタマイズ型エフェクトペダルとして登場した機材です。

ざっくり言うと、ひとつのペダルに固定されたエフェクトが入っているのではなく、エフェクトの中身を入れ替えて使う機材です。既存のライブラリから選ぶこともできますし、C++で自分で作ることもできます。そして一番話題になっているのが、Playgroundという仕組みを使って、文章でエフェクトを説明し、それを実際に使える形にするという部分です。

たとえば「テープが少しよれているようなディレイ」や「リバーブの奥で細かく砕けるモジュレーション」のように、音のイメージを文章で伝えます。それがそのまま完成品になるかは別として、少なくとも音作りの入口が、ノブの位置ではなく言葉になります。

ここが面白いところです。

ギタリストは、音を説明するのがうまいようで、かなり曖昧です。「もう少し太く」「もう少し湿ってる感じ」「抜けるけど痛くない」みたいな言葉で、だいたい生きています。スタジオでこれを言うと、隣の人が黙ってトーンを少し下げてくれたりします。

Endlessは、その曖昧さをそのまま機材側に投げる発想に近いものです。

これはAIエフェクターなのか

海外メディアでは、EndlessはAIアシスト型のペダルとして扱われることが多いです。ただし、Polyend側はAIという言葉を強く前面に出しているわけではありません。

この距離感も、少し興味深いです。

今のAIという言葉は、便利さと同時に、雑さも連れてきます。なんでもAIと言った瞬間に、どこか安っぽく見えることがあります。音楽の場合はなおさらで、「作る楽しさを奪うのではないか」という警戒も当然あります。

ただ、Endlessが面白いのは、AIが演奏を代わりにやるわけではないところです。フレーズを弾くのは自分で、音を選ぶのも自分です。AI的な仕組みが関わるとしても、それは音作りの道具側にあります。

ここは大事だと思います。

ギターの楽しさは、正解に早く着くことだけではありません。むしろ、寄り道している時間にあります。少し変な音が出て、でもそれが曲の一部になってしまいます。そういう偶然を、完全に効率化してしまうとつまらなくなります。

だからEndlessに期待したいのは、「最短で理想の音を出す機械」ではなく、「思いつかなかった音に連れていく箱」としての役割です。

買うべき人

Polyend Endlessが向いているのは、まず実験が好きな人です。

普通のオーバードライブ、普通のディレイ、普通のリバーブが欲しいなら、他にもっと分かりやすい選択肢があります。すでに名機もありますし、マルチエフェクターも強いです。BOSSでもLine 6でもNeural DSPでも、現場で使いやすいものはたくさんあります。

でも、Endlessに向いている人は、たぶんそこだけを見ていません。

「この曲だけに合う、変なディレイがほしい」

「普通のフェイザーではないけど、周期的に揺れる何かがほしい」

「自分の言葉から音が生まれる過程を試してみたい」

そういう人にとっては、かなり魅力があります。

特に、ギターを単体の楽器としてではなく、制作や映像、文章、作品全体の一部として扱っている人には相性がいいと思います。音色を探すというより、作品の質感を設計するための道具になる可能性があります。

Rimo的に言えば、Endlessは「機材」よりも「再構の装置」に近いです。

まだ待っていい人

一方で、すぐに飛びつかなくていい人もいます。

まず、ライブで安定して使いたい人です。現時点のレビューでは、Playgroundで作ったエフェクトの生成や転送、使い勝手にまだ粗さがあるという指摘もあります。ペダルボードの中心に置いて、毎回確実に同じ仕事をしてほしいなら、もう少し様子を見てもいいと思います。

次に、音作りに時間をかけたくない人です。

これは矛盾しているようで、たぶん大事です。Endlessは自由度が高いぶん、迷えます。言葉で頼めるということは、言葉を考える必要があるということです。しかも一発で理想の音になるとは限りません。何度か直して、試して、違うと思って、また戻る。これは楽しい人には楽しいけれど、面倒な人にはかなり面倒です。

そして、AIという言葉に抵抗がある人も、無理に受け入れなくていいと思います。

ギターは古い道具と新しい技術が変な形で同居している楽器です。真空管アンプの横でiPadを使います。ヴィンテージギターをデジタルワイヤレスで鳴らします。そういう矛盾が普通にあります。

だから、新しいものを全部受け入れる必要はありませんし、全部拒む必要もありません。自分の音にとって必要かどうかで見ればいいと思います。

重要なのは「AIかどうか」ではない

Endlessの話で一番大事なのは、AIかどうかではないと思います。

重要なのは、エフェクターが「完成された箱」から「育てる箱」に近づいていることです。

昔のコンパクトエフェクターは、ある意味で潔いものでした。この箱はこういう音です、と言い切っていました。Tube ScreamerはTube Screamerですし、RATはRATですし、Big MuffはBig Muffです。もちろん個体差や設定はありますが、基本的にはキャラクターがあります。

今の機材は、そこが揺れています。

小型マルチは、たくさんの音を小さな箱に入れます。BOSS PX-1のような発想は、ひとつの筐体に複数の名機を読み込みます。Endlessはさらに進んで、まだ存在しないエフェクトを作ろうとします。

便利になりました。

でも同時に、選ぶ責任も増えました。

昔は「このペダルの音が好きか」で済みました。これからは「自分はどういう音を欲しがっているのか」を、もう少し深く言葉にする必要が出てきます。

それは少し面倒で、少し豊かです。

Rimo的結論

Polyend Endlessは、今すぐ全員が買うべきペダルではありません。

ただし、今後のギター機材を考えるうえでは、かなり重要なサインだと思います。

特に面白いのは、ギター機材が「音を買う」ものから、「音との関係を作る」ものへ変わりつつあることです。どのペダルを選ぶかだけでなく、どう説明するか、どう試すか、どこで違和感を残すか。そこまで含めて音作りになります。

Endlessは、まだ粗いかもしれません。

でも、粗いものには、たまに未来が混ざっています。完成された便利さよりも、少し不安定な入口のほうが、長く残ることがあります。

今ほしいのが、確実な歪みや、安心できる空間系なら、別のペダルでいいと思います。

でも、音作りの途中そのものを楽しみたいなら、自分の曖昧な言葉がどんな音に変わるのか見てみたいなら、Polyend Endlessは試す価値のある機材だと思います。

買うかどうかより先に、ひとつ考えておきたいです。

自分は、どんな音を「まだ名前のないまま」持っているのでしょうか。

Endlessが面白いのは、たぶんそこを聞いてくるところです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

それでは、Love Guitar!!

プロフィール
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Rimo

ギター、言葉、AIイラスト。ばらばらに見えるものを、観測し、痕跡として残し、別の意味へ組み直しています。整いすぎたものより、変化の途中にある景色に惹かれます。Nothing matches, everything fits. ーほどけてる。けどここにいる。

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