JBL BandBox | 好きな曲からギターを消して、自分の音を重ねるアンプ

ヘッドホンで曲を聴きながらギターを弾く人物を描いたRimoのイラスト

Bluetoothスピーカーから、好きな曲を流す。

そこからギターだけを退かせる。

空いた場所へ、自分が弾く。

JBLから登場した「BandBox Solo」と「BandBox Trio」は、この流れを一台の中でできるギターアンプです。

2026年8月9日の観測時点では、日本のギター系YouTubeでもBandBox Trioの紹介動画が近い時間帯に重なりました。GREEN FUNDINGでは同日時点で支援総額が8,681万円を超え、支援者は2,344人。すでに一部の早期支援枠が埋まるほど反応が集まっています。

ただ、新しいギターアンプとして見るだけでは、この製品の面白さを少し取りこぼす気がします。

JBLと聞いて、完成した音楽を鳴らすスピーカーを思い浮かべる人は多いでしょう。その箱が、曲を聴かせるだけでなく、自分の演奏が入る余白まで作り始めました。

なお、この記事は2026年8月9日時点の公開情報をもとにした観測です。実機を使用したレビューではありません。ステム分離の精度やアンプとしての音質は、公開されている仕様と第三者の試用記事を分けて扱います。

JBL BandBoxとは

JBL BandBoxは、ギターアンプ、Bluetoothスピーカー、練習ツールを一つにまとめた製品です。

大きな特徴は「STEM AI」と呼ばれる音源分離機能にあります。スマートフォンから曲を再生すると、本体の操作だけでギター、ボーカル、その他の音量を切り替えられます。JBL Oneアプリでは、各パートの音量を細かく調整し、ドラムを分離対象として選べます。

たとえば、好きな曲からギターを小さくする。その状態でBandBoxへ自分のギターをつなぎ、空いた場所を弾く。

従来も、カラオケ音源を探したり、パソコンの音源分離ソフトを使ったりすれば似た練習はできました。BandBoxは、その準備をスピーカーとアンプの中へ持ち込みます。

チューナー、メトロノーム、ドラムマシン、ルーパー、ピッチシフト/キー変更にも対応しています。USBオーディオとしてパソコンへつなぐこともでき、ヘッドホン練習も可能です。

つまり、音を鳴らす箱というより、曲を練習素材へ組み替える箱です。

SoloとTrioは、大きさだけの違いではない

BandBoxには、小型のSoloと、出力の大きいTrioがあります。

Soloは18Wで、重さは約0.53kg。一般販売予定価格は35,200円です。片手で持てるサイズに、ギター/マイク入力、ヘッドホン出力、USBオーディオ、最大約6時間のバッテリーを収めています。

机やソファの近くへ置いて、思い立ったときに曲へ混ざる。Soloは、その距離感に向いています。

Trioは135Wで、重さは約6.65kg。一般販売予定価格は84,700円です。3系統の楽器入力と4チャンネルミキサー、4.3インチ画面、最大約10時間の交換可能バッテリーを備えます。

ギターを一人で練習するだけでなく、歌やほかの楽器もつないで、小さなセッションや路上演奏へ持ち出す。Trioは、演奏する場所そのものを運ぶ方向へ寄っています。

Soloは「すぐ弾ける個人の練習環境」。Trioは「人と音を集める可搬型の演奏環境」。同じ機能を大小で分けただけではなく、使う場面の中心が違います。

好きな曲が、教材ではなく演奏する場所になる

曲に合わせてギターを練習するとき、私たちは完成した演奏の外側から追いかけます。

原曲のギターを聴き取り、指板の位置を探し、同じタイミングで重ねる。音量が拮抗すると、自分の音が合っているのか、原曲に隠れただけなのか分からないこともあります。

BandBoxは、先に原曲側のギターを退かせます。

上手な演奏を眺めるための曲が、自分の音を置ける場所へ変わる。譜面や解説を増やすのではなく、すでにある音を少しほどくことで、練習の入口を作っています。

ここが、ほかの多機能アンプと少し違って見えるところです。

以前、Rimo Blogでは小型ギターアンプが家の音作りへ広がっている流れや、アンプが小さなスタジオになっていくLAVA STUDIOを取り上げました。

どちらも、ギターアンプへ録音や制作の機能が集まっていく変化でした。

BandBoxは、反対側から来ます。

JBLが長く磨いてきたのは、音を人へ届けるための箱です。その再生機器にギター入力を足し、さらに再生中の曲をほどく。すると、聴くための箱の中に、演奏する場所が現れます。

アンプがスピーカーに近づいたというより、スピーカーがこちらの演奏を待つようになった。私はそこに、この製品らしさを感じます。

試す前に分けておきたいこと

便利そうに見える一方で、公開情報だけでは判断できないこともあります。

まず、ステム分離は元の音源によって結果が変わります。ギターが何本も重なった曲、強い歪みとシンセが混ざった曲、ライブ音源などで、どこまで自然にギターだけを退かせられるかは、実際の曲で試す必要があります。

分離したあとに少し音が残ったり、ほかのパートまで変化したりしても、それが即座に失敗とは限りません。練習で自分の音を見つけやすくなる程度に空けば、用途としては成立するからです。ここは、音源制作のための高精度な分離と、練習のための分離を同じ基準で測らない方がよさそうです。

次に、アンプとしての手触りです。

公開されている試用記事では、Soloのサイズから想像する以上の鳴りや扱いやすさが評価されています。ただし、ピッキングへの反応、歪みの質感、大きな音で鳴らしたときの余裕は、仕様表だけでは分かりません。ここは実機レビューを待つか、自分で試奏して確かめたい部分です。

また、STEM AIで扱う音源は非商用利用が前提です。楽曲を分離して演奏した映像を公開したり、配信に使ったりする場合は、楽曲の著作権と利用している配信サービスの規約を別に確認する必要があります。

BandBoxが合いそうな人

BandBoxの中心にあるのは、音作りを深く掘ることより、好きな曲と自分のギターの距離を短くすることです。

だから、次のような人には相性がよさそうです。

  • 以前弾いていた曲を、もう一度自分の音で弾きたい人
  • 原曲に自分の演奏が隠れてしまうと感じる人
  • パソコンを立ち上げず、音源分離とアンプをすぐ使いたい人
  • Bluetoothスピーカーと練習用アンプを一台にまとめたい人
  • 歌や複数の楽器をつなぎ、外へ持ち出したい人

反対に、特定の真空管アンプのような反応を最優先する人や、すでにDAWと音源分離ソフトを常用している人には、BandBoxでなければならない理由が薄いかもしれません。

SoloかTrioかで迷うなら、出力の数字より「誰と、どこで弾くか」を先に決める方が分かりやすいと思います。

一人で曲へ入り直すならSolo。人や場所まで巻き込むならTrioです。

聴いた痕跡を、自分の演奏へ組み直す

好きな曲を聴いて、ギターを手に取る。

そこにはいつも、少し距離があります。

原曲はすでに完成していて、自分はその外にいる。上手く弾けない夜ほど、その完成度が遠く感じられます。

BandBoxは、完成した曲を壊すわけではありません。ギターの音量を少し下げ、自分が入れる余白を作るだけです。

原曲を観測し、消えきらない演奏の痕跡を聴き、その場所へ自分の音を重ねる。

それはコピー練習でありながら、同じ曲をその日の自分で組み直す、小さな再構でもあります。

JBLがギターアンプを作ったことより、聴くための箱が、弾く人の余白まで扱い始めたこと。

BandBoxで気になるのは、そこです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

それでは、Love Guitar!

参考

プロフィール
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Rimo

ギター、言葉、AIイラスト。ばらばらに見えるものを、観測し、痕跡として残し、別の意味へ組み直しています。整いすぎたものより、変化の途中にある景色に惹かれます。Nothing matches, everything fits. ーほどけてる。けどここにいる。

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