弓木英梨乃さん、ついにシグネチャーギターが出ます。
モデル名は、そのまま「Erino Yumiki Stratocaster」。
鮮やかなYellow Pearlのボディに、ゴールドのパーツ。まず目に入るのは、やっぱりこの色です。
でも、仕様を見ていて一番気になったのは、通常のStratocasterより約5mm薄いボディでした。
派手な色より、5mmの薄さ。
そこに、このギターが何を目指した一本なのかが表れている気がします。
Rimo Blogで弓木さんを取り上げるのは、これが初めてではありません。
2020年に一度。その翌年には、BTS「Dynamite」の演奏から、カッティング、オクターブ奏法、タイトなリズムの組み立てを観察しました。
あれから5年。
弓木さんの名前を冠したギターが出ると聞けば、やっぱり素通りはできません。
繊細なカッティングも、太い歪みも、歌も、アレンジも担う人が、自分の名前を付ける一本に何を求めたのか。
答えは、尖った音だけを出すギターではありませんでした。
本人の言葉では、「この一本でなんでもできる」と思える、どんなときにも頼れるギター。
これ、かなり弓木さんらしいなと思います。
この記事は実機を試奏して、音や弾き心地を評価するレビューではありません。2026年9月1日時点のFender公式情報と、弓木さんがこれまで語ってきた言葉、実際の使用機材から、このシグネチャーモデルに残された設計思想を観測します。
Erino Yumiki Stratocasterとは
Erino Yumiki Stratocasterは、弓木英梨乃さんにとって初のシグネチャーモデルです。
2026年8月26日に発表され、9月24日に発売予定。価格は220,000円です。
土台になったのは、弓木さんが長く愛用してきたAmerican Ultra Stratocaster HSSです。
主な仕様を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ボディ | アルダー、通常のStratocasterより約5mm薄い設計 |
| カラー | Yellow Pearl |
| ピックアップ | 新設計ノイズレス+オリジナル・ハムバッカーのHSS構成 |
| ネック | メイプル、Modern “D”シェイプ |
| 指板 | ローズウッド、9.5〜14インチのコンパウンド・ラジアス |
| フレット | 22本、ミディアム・ジャンボ |
| ネック裏 | オイル・フィニッシュ |
| ブリッジ | 2点支持シンクロナイズド・トレモロ |
| 発売日 | 2026年9月24日 |
| 価格 | 220,000円(税込) |
ネックジョイント部のヒールは、ハイポジションへ手を伸ばしやすいように削られ、オリジナルロゴ入りのネックプレートが付きます。
スペックだけを見れば、現代的で幅広い音に対応するHSSのStratocasterです。
ただ、この一本は急に「万能」を目指したわけではありません。
弓木さんは、シグネチャーモデルができる前から、一本でいろいろな現場を渡っていました。
「一本だけ背負ってスタジオへ行きたい」
2024年、ギター・マガジンのインタビューで、弓木さんはレコーディングにAmerican Ultra Stratocaster HSSを使ったと話しています。
クリーンも歪みも、好きなのはセンター・ピックアップ。曲ごと、役割ごとにギターを細かく替えるのではなく、ほぼ一本で録音していました。
以前は、ソロならハムバッカー、バッキングならシングルコイルと考えていたそうです。
ところが、一本で弾いてみると、替えなくてもいける。
この変化が面白いです。
多くの音が出せるから万能なのではなく、ひとつのギターを弾き続けた先で、自分の中にある音の幅が見えてきたのかもしれません。
2025年のFender Experienceでは、さらに端的な言葉を残しています。
できれば、ギター一本だけを背負ってスタジオへ行き、その一本だけで帰りたい。
丈夫で、音の幅が広く、頼れる一本。
今回のシグネチャーモデルに書かれている「なんでもできる」は、新製品のために用意された宣伝文句だけではありません。
すでに何年も、その弾き方をしていたわけです。
5mm薄いボディは、足し算ではなかった
シグネチャーモデルというと、その人らしい機能や装飾を足していくイメージがあります。
専用のピックアップ。特別な色。本人のロゴ。
Erino Yumiki Stratocasterにも、もちろんそれらはあります。
その一方で、ボディは約5mm薄くなりました。
足したのではなく、削っています。
Fenderは、長時間のライブやリハーサルで身体にかかる負担へ配慮した設計だと説明しています。現時点で個体重量は公表されていないため、「実際に軽い」「長時間弾いても疲れにくい」とまでは断定できません。
それでも、何を問題として見ていたかはわかります。
一瞬だけ強い音を出せることより、演奏を続けられること。
ステージで目立つことと、そこで身体を支え続けること。
カッティングとオクターブ奏法を行き来する演奏は軽やかに見えますが、その軽やかさを支える道具は、ずいぶん現実的です。
この5mm、かなり好きです。
HSSは「持ち替えない」ための幅
ピックアップは、ネックとミドルに新設計のノイズレス、ブリッジにオリジナルのハムバッカーを置いたHSS構成です。
繊細な音、カッティング、深い歪み、厚みのあるリード。
公式には、そうした幅広い演奏へ対応する設計だと説明されています。
HSSは珍しい構成ではありません。一本で幅広く弾きたい人にとって、昔からある実用的な組み合わせです。
でも、弓木さんの場合は「何でも弾けます」というカタログ上の話だけではないんですよね。
歌の後ろで細かくリズムを刻む。
曲の隙間に短いフレーズを置く。
前へ出る時は、歪んだ音で一気に弾き切る。
Rimo Blogで以前取り上げたBTS「Dynamite」の演奏でも、カッティングとオクターブ奏法を行き来しながら、曲を止めずに表情を変えていました。
そのたびにギターを替えるのではなく、同じ一本の中で右手と音の置き方を変える。
持ち替えないことは、効率だけの話ではありません。
身体とギターの距離を切らずに、曲の中で役割を変えていく方法でもあります。
何でもできるのに、無色ではない
幅広く使えるギターには、少し地味なイメージもあります。
どんな現場にも合わせやすい黒や白。癖の少ない見た目。仕事道具として目立ちすぎないことも、ひとつの正解です。
Erino Yumiki Stratocasterは、その方向へは行きませんでした。
鮮やかなYellow Pearlに、ゴールドのパーツ。
本人は、黄色のわずかな色味やきらめきまで何度も調整したそうです。
一本で何でもこなしたい。でも、誰のギターかわからなくなるほど無色にはしたくない。
実用性と個性を、どちらか一方へ寄せていません。
目に見えるところは、思い切り明るい。
身体に触れるところでは、5mmを静かに削る。
揃っていないようで、ちゃんと一本に収まっています。
このギターが合いそうな人、待った方がよい人
Erino Yumiki Stratocasterが合いそうなのは、次のような人です。
- 弓木英梨乃さんの演奏や音楽が好き
- クリーン、カッティング、歪んだリードまで一本で弾きたい
- ヴィンテージ仕様より、現代的なネックや演奏性を求めている
- HSSのStratocasterを、長く使える仕事道具として探している
- ステージで埋もれない色にも惹かれる
一方、発売前の今すぐ予約せず、実機を待った方がよい人もいます。
- 伝統的な3シングルのStratocasterを探している
- 太めのヴィンテージ・ネックや丸い指板が好き
- 薄いボディによる重量やバランスの違いを、自分で確かめたい
- 新設計ピックアップの音を、自分のアンプで確認してから決めたい
価格は220,000円です。好きなアーティストのモデルでも、弾き心地まで自分に合うとは限りません。
9月24日の発売後、店頭で重量、ネック、ストラップを掛けた時のバランスまで確認して選ぶのが安全です。
頼れる一本には、戻ってこられる重心がある
ギターを何本も持ち替えるのは楽しいです。
音が変わり、姿勢が変わり、弾くフレーズまで変わります。
それでも、今日は一本だけで行きたいと思う日があります。
そんな時に必要なのは、すべての音を完璧に真似できるギターではないのだろうなと思います。
クリーンでも、歪ませても、歌の後ろでも、前へ出ても、自分の弾き方へ戻ってこられること。
何でもできるのに、無色ではない。
Erino Yumiki Stratocasterは、弓木さんが長く使ってきた一本を、ただ豪華にしたモデルではありません。
何年もかけて見つけた重心を、自分の色と身体に合わせて、もう一度作り直したギターです。
Yellow Pearlの明るさと、削られた5mm。
その両方があるから、頼れる一本になったのかなと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、Love Guitar!


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